PK(ペナルティー・キック)の極意

上手くPK を蹴るには、遅くともボールをセットする前に、三つのことを予め決定しておかなければならない。
一つ目は視線である。どこをいつ見るのか、見ないのか決めておく。キーパーを見るのか、キーパーと目が合わないように審判を目で追いかけるか、ボールだけを凝視し続けるかを予め決めておく。ゴールのどの部分をいつ見るのか、視線を向けないで周辺視野だけでゴールやキーパーの位置を把握するのか決めておく。
二つ目はスタートポジションである。自分がゴールの真中に最も蹴りやすいスタート位置をポジションゼロとすると、右利きの場合、そこから一歩左に移動するごとにゴールの左側へと蹴り難くなったように見える。実際に蹴り難いかどうかは問題ではなく、キーパーにとってそう見えるかどうかが重要なのだ。つまり左に歩を進めるごとに、キーパーに対してそういう錯覚を与えられるということだ。だからポジションゼロに立つもよし、そこから左右どちらかに寄るもよし、予め決めておく。助走の長さは好みと三つ目の決定事項との兼ね合いで決めればよい。
三つ目はアプローチである。スタートポジションからボールへのコース取りである。スタートポジションで錯覚を生んだとしても、アプローチでポジションゼロに戻ってしまえば効果が相殺されてしまう。スタートポジションと同様に、どういうコースをたどってボールへアプローチするかで、新たな錯覚を引き起こしたりまたは既存の視覚効果を強化することもできる。だからアプローチも予めしっかりと決めておかなくてはならない。
 
以上。その他のことは自由だ。キーパーの動きを見ながら蹴る方向を決めてもよし、事前に蹴りこむゴールの位置を決め打ちしてもよし、キッカーそれぞれの好みと蹴る技術の問題で、結果は運と練習しだいである。
 
最後に三つの決定がなぜ必要か説明すると、キーパーの立場に立つと、意識的か無意識的または分析上か本能に従ってか、これら三つの要素から情報を得てボールの行方を予測しているからだ。キッカーのかけひきに利用できる行動は、同時にキーパーの予測の材料ともなるからだ。敵にどの情報を提供をするかはキッカーの自由だが、無自覚であってはならない、意識した上でPKを蹴るべきである。
今すぐに三つの決定事項の一つのパターンは準備するべきだ。ボールをセットしてしまってから考えても遅すぎる。その瞬間からかけひきはすでに始まっているのだ。ボールを地面に置きながら、重要な情報をもうキーパーに渡しているかもしれない・・・。