2022-01-01から1年間の記事一覧

オフサイド~偶然と故意の間の深淵~

人類の進化は手と脳の発達の相乗効果によるらしい。手で道具を器用に操ることで脳が発達し、またその果実として高度な道具を手にすることができた。言語もその一つである。 サッカーという競技は、キーパー以外フィールド内で手を使用することを禁止する。こ…

PK(ペナルティー・キック)の極意

上手くPK を蹴るには、遅くともボールをセットする前に、三つのことを予め決定しておかなければならない。 一つ目は視線である。どこをいつ見るのか、見ないのか決めておく。キーパーを見るのか、キーパーと目が合わないように審判を目で追いかけるか、ボー…

コーナーキックの正しい盗り方

①一度も切り返さないで、1対1のドリブルでゴールライン際までボールを勢いよく運ぶ ②ドリブルのスピードをなるべく落とさないまま、相対するディフェンダーのひざ元にボールを浮かせる 以上二つの工程を達成できれば確実にコーナーキックを盗ることができる…

サッカーの基礎理論⑫

中央突破とサイドアタック、側面突破とセンターアタック 最終ラインの背後のスペースへボールホルダーを侵入させることを目的とする攻撃を突破とする。守備ブロックを押し込み、高い位置での拠点作りを目的とする攻撃をアタックとする。突破に向いているのは…

サッカーの基礎理論⑪

サッカーの現象学のために しばらく思考の探検に付き合ってほしい。 2チームが4-4-2のフォーメイションで向き合っている。ボールポゼッション している相手チームの左サイドハーフが、サイドラインの突破を図って、 右サイドバックの位置へと上がってパス…

サッカーの基礎理論⑩

プレスは守備にあらず プレスとは、パスコースを制限しながらボールホルダーのプレイスペースを狭めるプレイである。守備の担当エリアに留まりつつ侵入してくるボールホルダーに寄せるのとは違い、自分から積極的にアプローチして相手のプレイに制限をかける…

へそとウラのはなし

へそとは腹の中程にあるくぼみないしでっぱりのことである。ウラとはディフェンダーの背後にあるスペースのことである。これは最終ラインのディフェンダーが、なぜ最も警戒しなければならないはずのウラを取られてしまうのかの話である。 一見すると、パスの…

サッカーの基礎理論⑨

スペースをカガクする③スペーストラヴェル 我々の設定では4バックとして考察してきたが、フォーメイションによってディフェンスが5バックや5ハーフを採用した場合はどうであろうか。この場合4レーンであったものが5レーンとなり、スペースは5分の4だけ狭くな…

サッカーの基礎理論⑧

スペースをカガクする②“スペース”を発見する 繰り返しになるが、マクロ的スペースとは相手フォーメイションの空白部分とオフサイドゾーンである。これに対してミクロ的スペースについて考える。例えば守備の左サイドバックとセンターバックとボランチが形成…

サッカーの基礎理論⑦

スペースをカガクする①“スペース”を活かす マクロ的(クラシカルな意味での)スペースとは、例えば4-4-2の同型フォーメイションで向かい合った場合、互いの両サイドバックが相手の空白地帯に陣取ることになる。この時の両サイドバックのポジションがスペー…

サッカーの基礎理論⑥

パスの区別から言えることは何であろうか。一見するとパスはつながるか否かが問題のように映る。だがサッカーはボールポゼッションを競うゲームではない。正確にパスをつなぐことと同じく、相手守備陣の急所を突いてゴールを目指すことも重要なのだ。ボール…

サッカーの基礎理論⑤

パスの区別 ①レシーヴァーの足元へ②レシーヴァーの走りこむスペースへ a)仕掛けるb)つなぐ (例) ①-a) フォワードへの楔のパス -b) キーパーへのバックパス ②-a) マンツーマンマークされな がらオーヴァーラップするサ イドバックへのパス -…

サッカーの基礎理論④

攻撃とは何か? サッカーは相手よりも1点でも多くゴールを目指す競技である。 攻撃とは得点につながるあらゆるプレイである。前線からプレスをかけて積極的にボールを奪いに行くことも、一定のリスクを負った攻撃の一手段である。ここで言うリスクとは、組織…

サッカーとは存在論である/The football is the ontology.

就学前の子供たちにサッカーをさせるとボールの周りに密集ができる。いわゆる 「だんごサッカー」の状態になる。これは彼らにとってボールを蹴ることこそが、サッカーの本質であることを表している。 ボールに触れずして何をもってサッカーと呼べるのか、と…

サッカーの基礎理論③

守備の正しいポジション 守備とは正しいポジションで待ち構えることであるが、それでは正しいポジションとはどこだろうか。守備における原則として最終ラインは一人余らせる。1トップに対しては2人で、2トップには3人で対応する。 マクロ的には4-4-…

サッカーの基礎理論②

組織的守備とは何か? もし個人の能力のみで対応するのであれば、目の前の相手に対して正対して、前後左右どちらの方向に向かっても常に反応できる体勢で待ち構えることが正しい守備と言える。しかしサッカーは1チーム11人でやる集団競技である。周囲の味方…

サッカーの基礎理論①

守備とは何か? ボールを奪うことは、我々の仮定の下では、決して守備ではない。サッカーの技能・経験が同じプレイヤーの間では、主導権は常にボールホルダーの側にある。ボールホルダーの前進を止め、そのプレイの選択肢をある程度限定できれば守備としては…

サッカーの基礎理論

サッカーの基礎理論~~経験知の言語化の試み~~ プロローグ サッカーにおける経験を一般化して説明することは難しい。あらゆる場面を想定して効果的なプレイを指示することはできない。しかしあえて理論化することできれば、未経験の場面に遭遇したプレイ…

日本サッカーの守備の誤解

「日本サッカーの新たな守備文化の醸成を目指して」 前半15分、後半残り15分に失点をしないこと重要性はしばしば指摘される。しかしサッカー日本代表の歴史を振り返ったとき、この大事な時間帯に失点を繰り返してきたのも事実だ。 我々は「ドーハの悲劇」を…