2023-01-01から1年間の記事一覧

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際⑤神の手

かの天才サッカー選手、マラドーナの‘’神の手‘’の話である。 ’86年W杯メキシコ準決勝での出来事である。前半はイングランドの激しいマークに苦労して、思うようなプレイをさせてもらえなかったが、それでも彼はいくらか天才の片鱗は見せていた。後半に入って…

珍ルールの備忘録

ルールにはあるけれど、それが実際に適用されたのを見たことがないルールがある。そのルールの存在は知ってはいたけれども、現実にその状況が起こったことを見たことも聞いたこともないものがある。 それはスローインから直接ゴールインするケースである。(…

ボールにメッセージとはこれ如何に

「ボールにメッセージのあるパスをY選手は出す」とよく言うけれど具体的にはどういうことか解説してみる。(まさかボールの表面にマジックペンでメモを書くわけではない。) 中盤で10数メートルの距離で、パスを通すだけの目的にしては必要以上に強いグラウ…

センターリング

最近ではあまり聞かなくなった単語の一つだが、ここではあえてセンターリングを使用する。センターリングはサイドアタックによってディフェンスラインを押し下げ、ゴール付近に侵入可能となったストライカーへ外から中へ・サイドからセンターへパスを送って…

Defense≠Pressと守備≠球奪取

今週のお題「マイ流行語」 一年前から日本サッカー界で流行らせようと考えてキャンペーンをしています。私のブログで繰り返し展開しているテーマなのですが、「守備はボール奪取することではない」ということです。サッカーにおいて、守備は守備、戦術的ボー…

守備を巡る物語

ある日の試合で、丁君と乙君と甲君が守備をした。 丁君がボールへの強い執着心を見せ、持ち前の集中力と反射神経の良さを発揮して相手のボールを見事に奪った。 皆が言った。 「ボールを奪い取る丁君の守備は素晴らしい」 しかしコーチは言った。 「ボールを…

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際④削ル

魑魅魍魎跋扈する。 蟹挟/Killer Sliding Tackle/踵踏ミ/踏付ケ/Toe Kick/momokan/ Flying Scissor Takedown/谷落/ガブリ寄リ/Hip Attack/Elbow/突キ/Punch/ 肘鉄/Karate Chop/Karate Kick/Lariat/喉輪/体当タリ/吊リ落トシ/Delayed Tac…

パスを受ける

ずぶのずぶの素人に向けてパスを受けられる仕組みについて説明する。これは本来言葉で表すようなことではなく、「習うより慣れろ」の次元のことであるが、サッカー未経験の人のためにあえてしてみる。 なぜ動き続ける受け手にボールをパスすることができるの…

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際③サッカーと暴力

もちろん暴力は犯罪です。しかしコンタクトスポーツであるサッカーの特性として、ルールで許された範囲を超えた暴力を目にすることがある。足を蹴ったり踏んだりするのは故意か偶発事故か見分けがつかないことがよくあるけれど、頭突きや嚙みつきなど日常生…

30年来の誤謬

30年より前から今日まで日本サッカー界にはびこる誤謬が存在する。それは「守備とはボール奪取である」というものである。ディフェンスとプレスは全く違った概念の単語として捉えるべきだというのがここでの主張だ。というのも、キーパーは自ら積極的にプレ…

ヘディング

ヘディングといっても頭突きの件ではない。それはまた別の機会にする。 ヘディングというあまりにも基本的な技術のことなので、本来言葉にするようなものではなく「習うより慣れろ」の次元の話だと思う。しかしせっかくなのでいくらか指摘する。 まず基本動…

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際②プロフェッショナルファウル

偉大な、惜しまれた監督も言及していたことがあったが、「効果的なファウル」というものがある。意図的だったり不可抗力が働くこともあるがファウルによって相手の攻撃の芽を摘むことである。感情的にカッとなって荒々しい振る舞いによるのでなく、冷徹に時…

サイドチェンジの効用(2023年秋)

『天使のシュートと悪魔のパス』の中で、パスには一本一本それぞれに価値があることに言及した。プラスの価値のパスもあればマイナスのもあり、一連のものが積み重なって得点なり失点なりにつながると考えられる。そこでは特にタテパスの重要性を強調するこ…

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際①偽ジャッジ

先ほどラグビーワールドカップフランス大会において、日本vsイングランド戦で起きた珍事がマスコミでも話題になった。ラグビーの規則ではボールを前方へと投げてはならず、前には手からこぼしても弾くことも許されない。試合後半、イングランド選手が側方…

マンツーマンディフェンスは戦術か否か推敲する

エリアに拘泥せずディフェンダーが一人の相手プレイヤーをマークし続けることをマンツーマンディフェンスと言う。 『基礎理論』の中でマンツーマンディフェンスについては一度も言及しておらず、隔靴搔痒の感を抱かれる方もいるかもしれない。理由は単純で、…

ポゼッションサッカーについて~For my admirable Pep ~

ボールポゼッションとは、同一チームのプレイヤーがボールコントロールし続けることだが、ゴールを目指すことを究極目標とする競技において、何を意味し何の得があるのだろうか。 ボールを相手チームに(キックオフを除いて)一度も触らせないでボールポゼッ…

得点のケーススタディ④ゴールキックからのトリックプレイ

ゴールエリアの左コーナーからのゴールキックで、ゴールエリアの両脇に一人ずつディフェンダーを配置し、キーパーがショートパスしてリスタートするふりをする。キーパーが助走を取るためにボールから離れたのを合図に、左脇のディフェンダーがプレスキック…

得点のケーススタディー③外回しからのニアサイド

3ー4ー2ー1のいわゆるクリスマスツリー型のシステムだった。中盤でワイドに攻撃の起点を創れるところに特徴がある。 相手陣高いポジションで、左サイドハーフがボールを受けた。左のシャドウ(セカンドトップ)がボールを受けにボールホルダーのサポート…

再始動(リスタート)の注意点 ~やるべきこととやらせてはならないこと~

フリーキックでもコーナーキックでもスローインでもマイボールのリスタートで欠かせないことはまずボールをセットする前に、シュートコースは空いていないかフリーの味方プレイヤーがいないかゴールチャンスにつながりそうなパスがどこかに出せないかを注意…

隠れる・離れる・抑える

マークされるストライカーがシュートを放つためにディフェンスをはがす手段として、「隠れる」「離れる」「抑える」がある。 「隠れる」はマークしようとするディフェンダーの視野から消える動きのことで、死角からパスを受けられる位置へと移動することによ…

触ることの本能と触らせないことの理性の相克

特にヘディングにおいて、それ以外の体の部位でも同じことなのだが、遠くへ飛ばすことが無理だったりコントロールすることが難しかったりするとき、強引にボールへ触りに行って結局こぼれ球を相手に拾われるよりも、あえて触らないでおいてその上で体を張っ…

得点のケーススタディー②ギャップを作ってウラを取る

前半4-3-3対4-3-3でマッチアップしていた両チームだったが、トップ下のプレイヤーのプレイの質の差がでて、AチームがBチームよりゲームを有利に進めていた。後半からBチームが4-4-2にシステム変更をして、この状況を打開しにきた。センターに…

得点のケーススタディー①天才ストライカーの考えるヒント

自陣でボールポゼッションをし始めて、まだ3~4本のパスを通してもプレスがかかりにくい状況が生じた。 その時センターフォワードが、ハーフウェイ付近から自陣のゴール方向へ、とぼとぼと歩き出した。小股でとぼとぼと、しかも下を向いて。何らかのアクショ…

初心者のためのボール奪取講座

まず。言葉で説明するようなことではないのだけど、あえてしてみる。 ボールホルダーが足元の静止したボールを、ディフェンダーから完全に隠した状態でキープしているとき、このボールを奪取するためには、相手を移動させるかボールを転がすかしなければなら…

バイシクルシュートへの対処法

ストライカーがバイシクルシュートを放とうとする予兆を察知したとき、マークするディフェンダーはどのように対処したか。 目の前のストライカーが体をひねって振り返った。ゴールに背中を向け、上空を流れて迫ってくるボールを目で追っている。 「バイシク…

ピッチ上でのワルツとメトロノームの幸運な出会いのように、何はともあれ美しい。

スムーズなパスワークはリズムを生む。トラップ、ヘッド=アップ、パス。Trap,Head up,pass.止める、見る、蹴る。 長い距離のパスの交換はゆったりと、短いものはぱっぱっぱと、一定のリズムを刻む。その波長はパスの受け手に伝わり、連携を高める。 ワンタ…

天使のシュートと悪魔のパス

(ポイント表) スーパーシュート+2/シュート+1/ドリブルで一人抜く+1 最終ラインのディフェンダーのウラを取るスルーパス+2/足元へのタテパス+1 ヨコパス±0/シュートにつながるラストパス+1 敵を背負ってのバックパス-1/前方へターンで…

得点が入りそうなコーナーキック(仮)

これは仮説である。コーナーキックで得点できそうな気がする、という感覚的な理想をここでは提案する。 ①ボールを受けるためにゴール前を横切るとき、長い直線距離を移動できればセンタリングを合わせ易くなるが、密集をすり抜ける抜けることは逆に難しくな…

サッカーの基礎理論を書き終えて

長々と書いた文章を読んでいただいた方に申し上げるのは心苦しいが、本論考を御理解いただいてもサッカーが上手くなるわけではない。サッカーの上達には日々のトレイニングによる外ない。 この一連の文章は言わば、サッカーのプレイの取扱説明書であり、様々…

サッカーの基礎理論〈終〉

身体能力と判断力 世界最速の男がなぜプロサッカープレイヤーになれないのか。世界記録を叩き出す肉体の持ち主が、なぜプロサッカープレイヤーとして活躍できないのか。彼が100メートル先にあるボールを追えば、10秒後には彼の足元にあるはずだ。これは驚異…