気分de迷著⑥

ドリブルであってもパスであっても、その目的を意識してゲームの流れの中で適切な選択をするべきだと著者は言う。パスというだけあって、つながるかどうかに関心が向かいがちだが、無目的なパスが何本つながったとしてもサッカーにはならない。ゲームを組み立て、モメンタム(よい勢い)を生み出すようなパスこそが必要なのであって、パス回しさせられるのはかえってカウンターアタックのリスクを増幅させるだけだ。

仕掛けるパスで数的優位の局面を生み出し、なおかつできるだけゴールに近い所でそうすることがパスの真の狙いであると、著者は説く。

 

 

 

【パスの区別】

パスの区別から言えることは何であろうか。一見するとパスはつながるか否かが問題のように映る。だがサッカーはボールポゼッションを競うゲームではない。正確にパスをつなぐことと同じく、相手守備陣の急所を突いてゴールを目指すことも重要なのだ。ボールポゼッションを目的に相手のプレスをかいくぐりながら、ゲームのリズムを作ることもできるが、仕掛けのパスによってタイミングよく守備陣の隙を突きゴールへ迫ることもできる。互いのハイプレスによりターノーヴァーを繰り返すようなゲームのときや、人数をかけて堅固な守備ブロックを組む相手のとき、仕掛けのパスのチャンスは究極的に一瞬に限られる。ゴールへと続く門はいつまでも開いているわけではない。

仕掛けのパスはつなぎのパスよりターノーヴァーのリスクが高いといえる。 しかしオフサイドラインの背後 へと繰り返し仕掛けることで、フォーワードへの楔のパスがかえって通りやすくなることがある。その逆もまた同様である。仕掛けのパスによって例えボールを失ったとしても、それが相手守備陣へのプレッシャーとなり、次のチャンスに相手守備陣を崩すための足掛かりとなる。またつなぎのパスだけをただ繰り返しても、守備のフォーメイションは単調なスライドを繰り返すだけで堅固なままかもしれない。ボールを失うリスクを全く取らずに効果的な攻撃を繰り出すことはできないだろう。
それからフィールドのどの地域でボールポゼッションをしているのかも考えなければならない。自陣に押し込まれている状況で足元へつなぐパスしか使えていないということは、たとえ何本パスが回っていても攻撃にはなりえない。これはいわゆる「ボールを回させられている」状態である。フィールドの残りの半分であるオフサイドゾーンへ侵入しなければ、その先のゴールには決して結びつかないからだ。 この場合オフサイドラインの背後を狙うオフサイドゾーンへの仕掛けのパスが絶対に不可欠なのだ。逆に十分に相手陣を押し込めている状況では、足元へのつなぐパスの重要性は増すだろう。相手陣でボールポゼッションし続けることが、守備陣へのプレッシャーとなり、守備の陣形のスライドを強いて体力気力の消耗をもたらす。グラウンドの全体を広く使いゲーム展開を有利に進めるために、今どの種類のパスが最も有効なのか常に意識し考える必要がある。
ドリブルやパスで仕掛ける意味は数的優位を生み出すことにあり、究極的にはゴール前のバイタルエリアでこれを創り出すことが最終目標だ。ドリブルやパスで仕掛けて自分や味方のマーカーをはがすことで、守備のカバーのプレイヤーが対応のため引きずり出される。このタイミングに近くの味方と連携して、あるいは個人の能力でゴールに迫る。最後はつなぎのパスでプレイスペースを確保して、シュートコースを見つけることになるかもしれないが・・・。