へそとウラのはなし

へそとは腹の中程にあるくぼみないしでっぱりのことである。ウラとはディフェンダーの背後にあるスペースのことである。これは最終ラインのディフェンダーが、なぜ最も警戒しなければならないはずのウラを取られてしまうのかの話である。
 
一見すると、パスの受け手の足の速さだとか予測の正確さが成否を決するように思われるかもしれない。しかしウラを取られるとき、ディフェンダーに共通してある状況が見られる。パスの出し手と受け手は走路とパスコースを以心伝心し、息を合わせてウラを狙ってくる。正にその瞬間、ディフェンダーとパスの受け手のへそのむきが逆になる。パスの受け手はゴール方向へと前進しようとし、ディフェンダーは逆にパスの出し手に注意を払うためボール方向に正対することになる。この意識の指向の違いが体の向きの違いとなり、ウラへのスルーパスが出た瞬間から数メートルの距離の差となって表れる。ディフェンダーは体を半回転した後にボールへのアプローチを強いられ、逆にパスの受け手は競走馬がゲートオープンした時のようにまっすぐ飛び出せばよいのだ。この差によってウラは容易にオフェンスの支配下へと落ちる。
このへその問題を解決するにはどうすればよいだろうか。答えは単純である。ディフェンダーが自分のマークするべきパスの受け手と予め同じ方向にへそを向けておけばよいのだ。ウラを狙ったスルーパスの場合、ボールは必ずパスの受け手よりディフェンダーに近い位置を通過する。走力の差を無視するとして、へその向きさえ間違わなければ、ボールに先に到達するのはディフェンダーとなる。