サッカーの基礎理論⑨

スペースをカガクする③スペーストラヴェル


我々の設定では4バックとして考察してきたが、フォーメイションによってディフェンスが5バックや5ハーフを採用した場合はどうであろうか。この場合4レーンであったものが5レーンとなり、スペースは5分の4だけ狭くなり、その数は2.5倍多くなる。フィールドを12に区分けしそこを10人のフィールドプレイヤーでディフェンスしていたのが、フィールドを15に区分けしやはり10人でディフェンスすることとなる。また1.5列目の採用などで3ラインが4ラインになった場合を考察する場合も、複雑にはなるが同様で、フィールドを12に区分けしていたものが16になる。5レーン4ラインの場合スペースは、それぞれ5分の3だけ狭くなり、数は5倍となる。ただしマクロ的スペースの考え方そのものは4レーン3ラインのときと何も変わらない。

マクロ的スペースとはフォーメイションにけるディフェンダーの不在であり、オフサイドゾーンにおけるキーパーの(部分的)不在である。これに対し、ミクロ的スペースとは守備ブロックの隙間である。ボールポゼッションの究極的目標は、最終ラインに意図的ないし偶発的に生まれるマクロ的スペースをタイミング良く活用することであり、またミクロ的スペースも利用しながら守備ブロックを押し込み、ヴァイタルエリアでシュートコースを創り出すことにある。複雑化し高速化する現在のサッカーにおいてマクロとミクロのスペースの区別は見分けにくくなっている。実際マクロ的スペースとミクロ的スペースが混然一体となる、カオス(判別不能な事態)も見受けられるだろう。

しかしゲームの際に、自分がボールホルダーにアプローチすることによって生まれる背後の“スペース”がどういうものか意識できるかは、プレイヤーにとって大きな違いとなるだろう。マッチアップする相手の背後に生まれる“スペース”がどういうものか見抜くことは、プレイの質に差を付けることになるだろう。フィールドという無限の宇宙の中で、広げるのかすり抜けるのかまたは活用するのか発見できるのか、チーム戦術もあるが最後は個人の判断力が試されるのだ。