気分de迷著①

著者はいきなり日本サッカー界の長年の常識に異議を唱える。「守備とはボールを奪うことではなく、正しいポジションで待ち構えることである」という持論を展開する。守備の目的は相手プレイヤーからボールを奪うことでなく、ゴールへ近づけないようにすることだと言う。一般人がメッシやムバぺのようなドリブラーからボールを奪うことなど不可能だろうけど守備はできる。無理に奪いに行って抜かれるよりも、少しでもその前進を遅らせたり、パスコースを限定できれば、それは立派に守備をしている。ボールを奪いに行って鮮やかにかわされる役を演じるよりも、少しでもじゃまする方がディフェンダーとして存在意義がある。

またオフサイドの反則というルールを利用して、相手のストライカーをゴールから遠ざけられることを指摘する。そして高い位置でブロックを組むことの意義が語られる。

 

 

【守備とは何か?】
 
ボールを奪うことは、我々の仮定の下では決して守備ではない。サッカーの技能・経験が同じプレイヤーの間では、主導権は常にボールホルダーの側にある。ボールホルダーの前進を止め、そのプレイの選択肢をある程度限定できれば守備としては成功である。例えばバイタルエリアにおいてシュートコースを限定し、ボールホルダーのそれ以上の侵入を阻止できれば、ボールを奪えなくとも守備としては成功している。ゆえに守備とは正しいポジションで待ち構えることである。
 
我々の仮定の下で、ターノヴァーが起きる場面は以下の3つである。
①相手のクリアー・ハイボールを偶然競り勝ち奪う
②相手の仕掛けのパスかドリブルを先回りして奪う
③相手のミス
 
イタリア代表のカテナチオは有名だが、ゴール前で密集を作り、攻撃選手やボールの侵入を待ち受けて阻止する。これはペナルティーエリアを城にみたてるならば、籠城作戦といえるだろう。オフサイドというルールを無視すれば、自陣ゴールの守備の堅さは、11人全員で密集を作ればもっとも強くなる。しかしながら実践においては、相手方の多くのプレイヤーを守備に専念させることができれば、その攻撃力を弱めることができる。つまり攻撃は最大の防御と言うが、攻撃は一定の抑止力を生み守備の一助となる。
 
オフサイドゾーンを形成する
 
サッカーにはオンサイドとオフサイドがある。よって実践においては単にゴール前で密集を作り籠城することはまれである。オフサイドゾーンを形成することで、攻撃選手をいったんバイタルエリアから追い出すことができる。オフサイドラインを高く設定できれば、それだけ攻撃プレイヤーをゴールから遠ざけることができるのだ。そしてキーパーを除く10人のフィールドプレイヤーが一体となり、オフサイドラインの前方で密集し、守備の堅さを維持する。フィールドプレイヤー全員が自陣では密集して空母のように前進後退を繰り返し守備し、敵陣では航空機が基地を襲うようにゴール前に殺到する。フィールドプレイヤーはオフサイドラインを堅持して、相手のオフサイドゾーンへの侵入を妨げながら密集して敵の攻撃を待ち構える。敵チームがボールを保持している場合、フィールドプレイヤーが一体となって密集し、ブロックを組むことが理想的な守備と言える。