ピッチ上でのワルツとメトロノームの幸運な出会いのように、何はともあれ美しい。

スムーズなパスワークはリズムを生む。トラップ、ヘッド=アップ、パス。Trap,Head up,pass.止める、見る、蹴る。

長い距離のパスの交換はゆったりと、短いものはぱっぱっぱと、一定のリズムを刻む。その波長はパスの受け手に伝わり、連携を高める。

ワンタッチパスはそのテンポを変える。メトロノームの振り子を速めたり遅らせたり、自在にそのテンポを変化させる。

ドリブルはそのリズムを壊してしまうことがある。周囲の味方の足を止め、パスの出るタイミングをわからなくしてしまうことがある。(ヘッド=ダウンしたままのドリブルは最悪だよ。)

 

トラップしてからのパスだけでなく、ワンタッチのダイレクトパスが入ることで、リズムを変えられる。リズムを変化させることで、敵のプレスの的が絞りにくくなる。トラップすると、視線や姿勢によってパスコースを読まれるが、ワンタッチパスであれば読まれにくい。読まれたとしてもパスカットされにくい。プレスをかける側に時間的余裕を与えないので、パスの受け手へのアプローチが遅らせられる。プレスをかいくぐるにはワンタッチパスはとても有効だ。

パスの受け手にとってもワンタッチは、しばしば素早い判断を求められることになり、その可能性を頭に入れておくことで集中力を高めることに繋がる。

ワンタッチパスが技術的に難易度を上げることは間違いないが、それ以上に難しいのは、視野の確保と高速の判断を常時維持しなければならないことだ。それでも単調になりがちなリズムの変化のために、可能なワンタッチはあえて多用するくらいの心づもりでいいだろう。

最も技術を求められるのは、ワンタッチのシュートかもしれない。ボレーキックともなると華やかな見せ場ともなる。シュートコースをふさがれる前に、ダイレクトでボールを蹴ることで、シュートコースはわずかなりとも広がる。成功すれば、シュートチャンスもゴールの可能性も増える。

足元へのワンタッチパスでなく、スペースへのワンタッチパスは好機につながりやすい。パスコースが読まれにくいこととリズムがテンポアップすることで、良い効果をもたらすことが多い。ただ受け手と出し手がよほど息を合わせて意思統一できないで、パスが通らなかったりオフサイドになったりする。出し手の技術は必須だが、受け手の鋭敏さも必要だ。互いに共通のイメージを持ち、以心伝心するかのように、タイミングとパスコースを合わせるのは至難の業だ。(常に意識を研ぎ澄まし、日々の鍛錬を怠らないよう!)

 

パスワークの間にドリブルを挟むとリズムが崩れる場合がある。周囲のプレイヤーの動きを鈍らせ、スペースで受けるパスのタイミングが計れなくなる。ドリブラーと上手く並走できればいいが、そうでないとき、動きのない味方へのパスは足元になりがちになる。タイミングの合わないスペースへのパスミスは、たいていドリブルの後の出足の鈍った受け手へのパス。

ドリブルが必要な場合、ドリブラーは周囲の味方の動きに常に気を配りながら、いつでもアイコンタクトしてパスが出せるように用意していなければならない。頭を下げて、パスの受け手の初動を見逃してはならない。