気分de迷著③

ここでは守備の具体的方法が述べられるが、サッカープレイヤーが実践において感覚的にやっていることをあえて言語化しているのだ。知識として持っていて実際のプレイとして実行してはいるけど、それを言葉で説明するとなると多くの人にとって難しいことだろう。なぜならそれはプレイヤー自身が他人のプレイを見て覚え、または勝負の中で学んだ経験知に基づいているからだ。授業のように誰かに説明を受けて、習った公式を適宜当てはめていくのとはわけがちがう。(この章は、「言われてみればそんな感じに動いているかな」と思うプレイヤーが結構多いかな。あまり深追いしない方が実践のためにはいいかも。ゲーム中は言葉で考えている時間はないはずだから。)

この章でグラウンドを俯瞰(バードビュー)するマクロ的視点と一部の局面を切り取って状況を判断するためのミクロ的視点、その両方から見つめる必要性が語られ守備の考え方の概要を説明している。

最後に相手がカウンターアタックを仕掛けた時のように、必ずしもブロックを組んで待ち受けるのではない場合、プレイ選択(ポジショニング)する優先順位が指摘される。

 

 

【守備の正しいポジション】

 守備とは正しいポジションで待ち構えることであるが、それでは正しいポジションとはどこだろうか。守備における原則として最終ラインは一人余らせる。1トップに対しては2人で、2トップには3人で対応する。

マクロ的には4-4-2や4-3-3のブロックを形成するために、正確な位置関係と相互の適切な距離を維持することを正しいポジションは意味する。4バックの最終ラインに対して2トップのフォワードであるとき、ボールサイドのサイドバック は比較的浮いた前方で守備し、また逆サイドのサイドバックセンターバックの2人に寄ってセンターに絞って守備する。逆サイドのサイドバックセンターバックをカバーするためである。
 4バックにの最終ラインに対して1トップ のフォワードであるとき、両サイドバック は比較的浮いた前方に位置するポジションを取るべきである。ワントップの対応は2人のセンターバックに任せて、サイドバックが中盤に加わり厚みを出す。最終ラインで攻守の人数のギャップがあるとき、フィールドのどこかで数的不利が生じる。サイドバックがそれに備えるのだ。

ミッドフィールダーは最終ラインのプレイヤーとの距離を常に意識し、自分の背後のスペースをオフェンスに利用されないように注意しなければならない。そしてブロックの中に侵入してくるオフェンスを、背後のディフェンダーと協力して逐次マークする。同時にボールホルダーのプレイをできるだけ制限するために近くのミッドフィルダーは寄せていくのだが、ボールサイドへ全体としてスライドしながら守備する。 このときボールホルダーを中心に包み込むように密集度を高めていき、基本的にはサイドライン際に追い込む。

ミクロ的にはまずそれぞれのマッチアップすべき相手を確定させる。このときも最終ラインで一人余らせる前提を忘れてはならない。オフェンスのポジションチェンジやシステムチェンジには、声を掛け合いそれぞれのマークを確認する。マークするべきプレイヤーと自陣ゴールの中心を結んだ直線上に位置する点のセンター寄りで待ち構えるのが、基本的に正しいポジションである。 また自分のマークすべきプレイヤーにボールがないときは、そのプレイヤーがトラップした瞬間に正しいポジションが取れる位置で待ち構えることになる。優先事項としてはボールホルダーがシュートレンジにいるときはシュートコースを消し、それ以外はゴール前のバイタルゾーンに侵入するストライカーへのパスコースを消す。 

 (補足) ミクロ的とマクロ的の意味は次の通り。1対1や2対2などマッチアップする局面を切り取って観察したときと、フィールド全体の中の位置関係から俯瞰したとき、それぞれミクロ的マクロ的とする。

 

カウンターアタックに対する守備

 

ブロックを組むことと人をマークすることに矛盾がある場合、マクロ的ポジションとミクロ的ポジションに齟齬が生じたときはどうすべきか。

相手ボールホルダーから数えて自陣で数的不利であれば、少なくとも一人はボールホルダーのプレイをできる限り遅らせるように働きかけ、残りのプレイヤーはブロックのゴールに近い位置からポジショニングしていく。このときオフサイドラインをどの高さに設定するか、全員で意思統一しなければならない。そしてひたすらにシュートブロックに集中する。

反対に数的有利であれば、上と同様ボールホルダーをチェックしながら、仮設の(本来組むべき)ブロックに侵入してきたオフェンスを順にマークしていく。ブロックの内側は人を捕まえることが最優先となる。

数的不利がないならば、ブロックの中はミクロ的ポジションがマクロ的ポジションに優越する。コーナーキックのようなセットプレイもこのケースに当たる。