サッカーの基礎理論⑫

中央突破とサイドアタック、側面突破とセンターアタック
 
最終ラインの背後のスペースへボールホルダーを侵入させることを目的とする攻撃を突破とする。守備ブロックを押し込み、高い位置での拠点作りを目的とする攻撃をアタックとする。突破に向いているのは俊敏性の高い(軽量な)フォワードで、ポストプレイに向いているのはフィジカルの強靭な(鈍足な)フォワードである。フォワードが俊足であるとき、ディフェンスチームはオフサイドラインを慎重に上げ下げしかつできるだけ深くしておきたいだろう。守備のことだけを考えれば、背後に生まれるスペースをできる限り狭くしておきたいからだ。フォワードが屈強であるとき、やや大胆にオフサイドラインを上げ下げできかつできるだけ浅くしておきたいだろう。背後のスペースをたとえ利用されたとしてもフォワードに追いつきリカバーできる可能性があり、大型のフォワードがゴールに近づくことにより単純なクロスボールで合わされるリスクを高めてしまうからだ。
拠点を作らせても突破は許さないか、突破を恐れるよりも拠点をなるべく浅く留めさせるか、戦略とかけひきが存在し得る。2トップの場合俊足と屈強の両タイプがいるとよい。戦略を複雑にし、読まれにくいかけひきができるからだ。
 
中央から攻めるメリットは何と言ってもゴールに近いところにある。突破を目指すにしても、拠点を作るにしても目的地に近い方が効率的である。ただし中央はディフェンダーが密集し易く、また左右どちらもカバーできるため最終ラインに一人余るディフェンダーの最適なポジションとなる。サイド(ここでのサイドはタッチライン際付近の、中央から遠いエリアをイメージしてほしい。)は中央に比べて手薄になりがちで、より攻撃しやすいと言えるだろう。しかしたとえサイド突破したとしてもまだゴールは遠い。ゴールへの長旅の道程でセンターバックのカバーが間に合い、追いつかれる可能性もある。十分な角度を付けてシュートコースを作るにも手間と時間がかかってしまう。それでも完全に側面突破できれば、広い視野と中央の味方ストライカーへのパスコースが確保できるだろう。
 
サイドアタックをしてゴールラインから離れた浅い位置で拠点を作るとき、オフサイドラインを浅い位置に維持させ、キーパーとディフェンスラインの間に広いスペースが生まれる。このスペースを利用しクロスボール・パスを入れることで、中央のストライカーと以心伝心して一気にゴールへと襲い掛かるチャンスとなる。そうであるならサイドの深い位置で拠点を作るとき、わざわざ自らこの貴重なスペースをつぶしているだけだろうか。
サイドの深い位置の拠点はオフサイドラインを強制的に押し下げさせているといえる。それによって中央のストライカーがゴールへと近づく権利を得る。拠点が深くなり角度がなくなる(ゴールラインに近づく)にしたがって、ディフェンダーにはボールとマークすべきアタッカーが同時に見えにくくなる。この時いわゆる“ボールウオッチャー”を生み、マークがおろそかになる原因となる。サイドから中央へのクロスボール・パスを深くえぐって折り返すことは、ディフェンスの対応を難しくする効果があり、ストライカーにとってはシュートをするために有利なポジショニングをするチャンスとなる。