絶対領域以上犯罪領域未満の際の際②プロフェッショナルファウル

偉大な、惜しまれた監督も言及していたことがあったが、「効果的なファウル」というものがある。意図的だったり不可抗力が働くこともあるがファウルによって相手の攻撃の芽を摘むことである。感情的にカッとなって荒々しい振る舞いによるのでなく、冷徹に時に比較衡量の計算の上で、今ここで行うファウルとそうしないでその先に降りかかるチームのピンチとを天秤に掛ける。傍から見たとき偶発的な接触に見えるか、明白な意思によると感じられるかでイエローカードが提示されるかどうかが決まる。さらに意図的なファウルがゴールの決定機を阻止する目的で犯された場合、それはレッドカードへと変わる。一枚目と二枚目に受けるイエローカードの意味を加味し、自分が退場処分を受けたとき、チームに掛ける迷惑とこのゴールチャンスを相手から奪うことの貢献度合いを推し量る。

味方のカバーがなく自分が最後の砦となり、ドリブルで抜かされてしまうと決定的なピンチになる場合、ボールそのものというよりは相手の体幹に自分の体をぶつけるようにして相手の走路を塞ぐ。いわゆる「体で止める」こともプロフェッショナルファウルとなる。しかし切り換えの一瞬の遅れを取り戻そうとファウルによってまずい流れを断ち切り、自分のというより味方の帰陣のための時間を稼ぐ目的で、プロフェッショナルファウルはネガティブトランジッションの時にしばしば見られる。

今やるべきか、一秒後二秒後まで自重して他の手段を探るべきか、手で引っ張るか足を掛けるか体当たりか、正当性、悪質性、妥当さ、卑怯さ、突発的に起こるピンチの芽が垣間見えた瞬間にこれらの判断をすぐに下さなければならない。あっという間に迫りくる結果に立ち向かわなければならない。やるのかやらないのか。やるならいつどうやって。躊躇している暇はない。相手が自分より速いプレイヤーの場合、今を逃せば二度と機会は巡ってこない。ペナルティーエリアに侵入されてしまっても手遅れだ。PKとレッドカードのダブルパンチを喰らうことになるからだ。決断の時はあまりにも短いものだ。

ファウルなしでディフェンスできれば当然それがベストだが、そうでない場合プロフェッショナルファウルによって失点を防ぎ、レフリーの指示に素直に従いイエローカードを受けることもゲームのルールを順守する一つの方法である。