得点のケーススタディー②ギャップを作ってウラを取る

前半4-3-3対4-3-3でマッチアップしていた両チームだったが、トップ下のプレイヤーのプレイの質の差がでて、AチームがBチームよりゲームを有利に進めていた。後半からBチームが4-4-2にシステム変更をして、この状況を打開しにきた。センターに2人ずつプレイヤ―が配置され、両サイドはドリブラーを起用した。ボールを受けたサイドのプレイヤーは、基本的に間髪を入れず一人で仕掛けるようにしていた。これによりAチームのウィングのプレイヤーは、守備の機能を果たさなくなった。ネガティヴトランジッションにおいて、守備位置に戻る前にドリブルを開始するため間に合わなくなった。またAチームのトップ下のプレイヤーを2人のボランチでマークすることになり、Aチームの中央のプレイエリアが格段に狭まった。そして前半と違い、Aチームのセンターバック2人に対して2人のセンターフォワードがマッチアップすることとなる。ワントップの時は、センターバックのどちらかが余ってカバーできたのだが、サイドバックが絞らなければ最終ラインのセンターでの数的優位は保てなくなった。

Aチームの右センターバックは前に強いタイプ、もう一人はスピードのあるタイプでウラにも強かった。Bチームが中盤でボールを奪った瞬間、最前線で張っていたセンターフォワード2人が同時にパスを受けに落ちてきた。足の速い左センターバックはさすがの反応をみせ素早く付いていく。右センターバックはいくらか遅れたがすぐに追いつきそうだった。しかしこの一瞬をフォワードは狙っていた。瞬発力の違いによって生まれたわずかなギャップを見逃さなかった。

右のフォワードがボールを受ける際、後ろ向きにトラップすると見せかけて、前方ゴール方向へとフリックした。右センターフォワードへのパスを察知していた左センターフォワードは、すでに半回転して追いつこうと距離を詰める右センターバックの背後を取る。フリックされたボールは2人のディフェンダーの間をすり抜けてオフサイドゾーンへと転がった。

センターフォワードが落ちてパスを受ける動きは完全にフェイクだった。前に引きずり出されたディフェンダーのウラを取るための戦略だったのだ。後は広大なスペースを一人でゴール前へとボールを運ぶだけだった。飛び出した左センターフォワードに追いつけそうなディフェンダーは存在せず、キーパーとの1対1はすでに確定していた。直後、ボールはゴールへと冷静に流し込まれた。