サイドチェンジの効用(2023年秋)

『天使のシュートと悪魔のパス』の中で、パスには一本一本それぞれに価値があることに言及した。プラスの価値のパスもあればマイナスのもあり、一連のものが積み重なって得点なり失点なりにつながると考えられる。そこでは特にタテパスの重要性を強調するこ…

絶対領域以上犯罪領域未満の際の際①偽ジャッジ

先ほどラグビーワールドカップフランス大会において、日本vsイングランド戦で起きた珍事がマスコミでも話題になった。ラグビーの規則ではボールを前方へと投げてはならず、前には手からこぼしても弾くことも許されない。試合後半、イングランド選手が側方…

マンツーマンディフェンスは戦術か否か推敲する

エリアに拘泥せずディフェンダーが一人の相手プレイヤーをマークし続けることをマンツーマンディフェンスと言う。 『基礎理論』の中でマンツーマンディフェンスについては一度も言及しておらず、隔靴搔痒の感を抱かれる方もいるかもしれない。理由は単純で、…

ポゼッションサッカーについて~For my admirable Pep ~

ボールポゼッションとは、同一チームのプレイヤーがボールコントロールし続けることだが、ゴールを目指すことを究極目標とする競技において、何を意味し何の得があるのだろうか。 ボールを相手チームに(キックオフを除いて)一度も触らせないでボールポゼッ…

得点のケーススタディ④ゴールキックからのトリックプレイ

ゴールエリアの左コーナーからのゴールキックで、ゴールエリアの両脇に一人ずつディフェンダーを配置し、キーパーがショートパスしてリスタートするふりをする。キーパーが助走を取るためにボールから離れたのを合図に、左脇のディフェンダーがプレスキック…

得点のケーススタディー③外回しからのニアサイド

3ー4ー2ー1のいわゆるクリスマスツリー型のシステムだった。中盤でワイドに攻撃の起点を創れるところに特徴がある。 相手陣高いポジションで、左サイドハーフがボールを受けた。左のシャドウ(セカンドトップ)がボールを受けにボールホルダーのサポート…

再始動(リスタート)の注意点 ~やるべきこととやらせてはならないこと~

フリーキックでもコーナーキックでもスローインでもマイボールのリスタートで欠かせないことはまずボールをセットする前に、シュートコースは空いていないかフリーの味方プレイヤーがいないかゴールチャンスにつながりそうなパスがどこかに出せないかを注意…

隠れる・離れる・抑える

マークされるストライカーがシュートを放つためにディフェンスをはがす手段として、「隠れる」「離れる」「抑える」がある。 「隠れる」はマークしようとするディフェンダーの視野から消える動きのことで、死角からパスを受けられる位置へと移動することによ…

触ることの本能と触らせないことの理性の相克

特にヘディングにおいて、それ以外の体の部位でも同じことなのだが、遠くへ飛ばすことが無理だったりコントロールすることが難しかったりするとき、強引にボールへ触りに行って結局こぼれ球を相手に拾われるよりも、あえて触らないでおいてその上で体を張っ…

得点のケーススタディー②ギャップを作ってウラを取る

前半4-3-3対4-3-3でマッチアップしていた両チームだったが、トップ下のプレイヤーのプレイの質の差がでて、AチームがBチームよりゲームを有利に進めていた。後半からBチームが4-4-2にシステム変更をして、この状況を打開しにきた。センターに…

得点のケーススタディー①天才ストライカーの考えるヒント

自陣でボールポゼッションをし始めて、まだ3~4本のパスを通してもプレスがかかりにくい状況が生じた。 その時センターフォワードが、ハーフウェイ付近から自陣のゴール方向へ、とぼとぼと歩き出した。小股でとぼとぼと、しかも下を向いて。何らかのアクショ…

初心者のためのボール奪取講座

まず。言葉で説明するようなことではないのだけど、あえてしてみる。 ボールホルダーが足元の静止したボールを、ディフェンダーから完全に隠した状態でキープしているとき、このボールを奪取するためには、相手を移動させるかボールを転がすかしなければなら…

バイシクルシュートへの対処法

ストライカーがバイシクルシュートを放とうとする予兆を察知したとき、マークするディフェンダーはどのように対処したか。 目の前のストライカーが体をひねって振り返った。ゴールに背中を向け、上空を流れて迫ってくるボールを目で追っている。 「バイシク…

ピッチ上でのワルツとメトロノームの幸運な出会いのように、何はともあれ美しい。

スムーズなパスワークはリズムを生む。トラップ、ヘッド=アップ、パス。Trap,Head up,pass.止める、見る、蹴る。 長い距離のパスの交換はゆったりと、短いものはぱっぱっぱと、一定のリズムを刻む。その波長はパスの受け手に伝わり、連携を高める。 ワンタ…

天使のシュートと悪魔のパス

(ポイント表) スーパーシュート+2/シュート+1/ドリブルで一人抜く+1 最終ラインのディフェンダーのウラを取るスルーパス+2/足元へのタテパス+1 ヨコパス±0/シュートにつながるラストパス+1 敵を背負ってのバックパス-1/前方へターンで…

得点が入りそうなコーナーキック(仮)

これは仮説である。コーナーキックで得点できそうな気がする、という感覚的な理想をここでは提案する。 ①ボールを受けるためにゴール前を横切るとき、長い直線距離を移動できればセンタリングを合わせ易くなるが、密集をすり抜ける抜けることは逆に難しくな…

サッカーの基礎理論を書き終えて

長々と書いた文章を読んでいただいた方に申し上げるのは心苦しいが、本論考を御理解いただいてもサッカーが上手くなるわけではない。サッカーの上達には日々のトレイニングによる外ない。 この一連の文章は言わば、サッカーのプレイの取扱説明書であり、様々…

サッカーの基礎理論〈終〉

身体能力と判断力 世界最速の男がなぜプロサッカープレイヤーになれないのか。世界記録を叩き出す肉体の持ち主が、なぜプロサッカープレイヤーとして活躍できないのか。彼が100メートル先にあるボールを追えば、10秒後には彼の足元にあるはずだ。これは驚異…

オフサイド~偶然と故意の間の深淵~

人類の進化は手と脳の発達の相乗効果によるらしい。手で道具を器用に操ることで脳が発達し、またその果実として高度な道具を手にすることができた。言語もその一つである。 サッカーという競技は、キーパー以外フィールド内で手を使用することを禁止する。こ…

PK(ペナルティー・キック)の極意

上手くPK を蹴るには、遅くともボールをセットする前に、三つのことを予め決定しておかなければならない。 一つ目は視線である。どこをいつ見るのか、見ないのか決めておく。キーパーを見るのか、キーパーと目が合わないように審判を目で追いかけるか、ボー…

コーナーキックの正しい盗り方

①一度も切り返さないで、1対1のドリブルでゴールライン際までボールを勢いよく運ぶ ②ドリブルのスピードをなるべく落とさないまま、相対するディフェンダーのひざ元にボールを浮かせる 以上二つの工程を達成できれば確実にコーナーキックを盗ることができる…

サッカーの基礎理論⑫

中央突破とサイドアタック、側面突破とセンターアタック 最終ラインの背後のスペースへボールホルダーを侵入させることを目的とする攻撃を突破とする。守備ブロックを押し込み、高い位置での拠点作りを目的とする攻撃をアタックとする。突破に向いているのは…

サッカーの基礎理論⑪

サッカーの現象学のために しばらく思考の探検に付き合ってほしい。 2チームが4-4-2のフォーメイションで向き合っている。ボールポゼッションしている相手チームの左サイドハーフが、サイドラインの突破を図って、右サイドバックの位置へと上がってパスを…

サッカーの基礎理論⑩

プレスは守備にあらず プレスとは、パスコースを制限しながらボールホルダーのプレイスペースを狭めるプレイである。守備の担当エリアに留まりつつ侵入してくるボールホルダーに寄せるのとは違い、自分から積極的にアプローチして相手のプレイに制限をかける…

へそとウラのはなし

へそとは腹の中程にあるくぼみないしでっぱりのことである。ウラとはディフェンダーの背後にあるスペースのことである。これは最終ラインのディフェンダーが、なぜ最も警戒しなければならないはずのウラを取られてしまうのかの話である。 一見すると、パスの…

サッカーの基礎理論⑨

スペースをカガクする③スペーストラヴェル 我々の設定では4バックとして考察してきたが、フォーメイションによってディフェンスが5バックや5ハーフを採用した場合はどうであろうか。この場合4レーンであったものが5レーンとなり、スペースは5分の4だけ狭くな…

サッカーの基礎理論⑧

スペースをカガクする②“スペース”を発見する 繰り返しになるが、マクロ的スペースとは相手フォーメイションの空白部分とオフサイドゾーンである。これに対してミクロ的スペースについて考える。例えば守備の左サイドバックとセンターバックとボランチが形成…

サッカーの基礎理論⑦

スペースをカガクする①“スペース”を活かす マクロ的(クラシカルな意味での)スペースとは、例えば4-4-2の同型フォーメイションで向かい合った場合、互いの両サイドバックが相手の空白地帯に陣取ることになる。この時の両サイドバックのポジションがスペー…

サッカーの基礎理論⑥

パスの区別から言えることは何であろうか。一見するとパスはつながるか否かが問題のように映る。だがサッカーはボールポゼッションを競うゲームではない。正確にパスをつなぐことと同じく、相手守備陣の急所を突いてゴールを目指すことも重要なのだ。ボール…

サッカーの基礎理論⑤

パスの区別 ①レシーヴァーの足元へ②レシーヴァーの走りこむスペースへ a)仕掛けるb)つなぐ (例) ①-a) フォワードへの楔のパス -b) キーパーへのバックパス ②-a) マンツーマンマークされな がらオーヴァーラップするサ イドバックへのパス -…